ー服部奨学生としての日々を振り返って
最初に服部奨学金のことを知って、情報を調べていたときから、奨学生同士の関わりが多い財団だという印象はありました。
私は、異分野の学生同士が活発に交流している様子に惹かれました。 大学院生で、かつ研究室所属となると、どうしても閉鎖的な環境になってしまいます。 私にとって服部財団はとても理想的な環境です。
私もこれまでは、自宅と研究室を往復するばかりの毎日で、たまに学会へ行く程度でした。 服部奨学生に採用され、行事やイベントに参加するようになってからは、想像以上に交流機会が多く、得られたすべての経験・学びが、今の自分につながっていると感じています。
「月額10万円を2年間」という、すごく大きな額の給付奨学金をいただきつつ、奨学生同士の交流ができるというのは本当にありがたいですね。 私自身、元々そういった環境に期待して応募しました。実際に服部奨学生としてご支援いただくようになってからは、期待以上のものを肌で感じることができて、本当に「採用していただいてありがとうございます」という気持ちです。
さまざまな分野で活躍する服部奨学生の情報を目にすると、「自分もがんばろう」というやる気にもつながります。 普段研究だけに注力していると、慣れが出てきて、意識しないとモチベーションが低下しがちですよね。 私にとって、外部からの刺激はモチベーションを上げるきっかけになります。
刺激でいうと、私は筋肉の研究をしていますが、スポーツ医学系の筋肉研究をしている服部奨学生がいて、同じ「筋肉の研究」でも視点が全く違うので、話しているだけでも興味深い発見があります。
自分自身の研究分野に関する知見がどんどん深まっていくにつれて、だんだん視野が狭くなってしまうこともありますからね。 一見、関連のないようにみえる分野の研究であっても、蓋を開けてみれば、密接に関係していることもあります。 しかし、他の学問分野については、意識的に取り込もうとしない限り、なかなか知識を得ることはできません。
やはり学問の道では、知識の「深さ」だけでなく、「広さ」も不可欠です。研究発表会や研修旅行といった公式行事はもちろん、近隣大学に通う学生で集まって話したり、教育のあり方について考える有志の座談会に参加したり、日々のSlack上でやりとりをしたりと、服部奨学生とのさまざまな関わり合いを通じて、自分の学問の幅や視野が広がったと思います。そうした意味でも服部財団は、自分にとって、なくてはならない「もうひとつの居場所」だと感じています。
服部財団には、高い志と明確な夢をもち、何かを成し遂げようという強い想いを持っている人が多く集まっていると思います。 そうした方々と交流して、互いに切磋琢磨していけるこの環境は、私にとって大切な居場所です。
ー日本学術振興会(学振)特別研究員採用まで
初めて学振のことを知ったのは、学部生のときでした。 先輩が受かったことがきっかけです。
私も、学部生のときに知りました。
ただ、採用率が二割弱なので、当時は他の学生よりも業績が多くなければ申請できないような印象をもっていました。
そうですね。 学会発表や論文などで、実績をたくさん残さなければいけないとは思っていました。
羽飼さんはいつ頃から申請書を書きはじめましたか?
私はM1の2月頃です。 ちょうどその頃、服部財団で学振セミナー(2023年4月23日、服部国際奨学財団事務局にてハイブリッド型で開催。参加者18名)が開催されて、 そこに参加してからですね。
私も参加しました。 「業績がどれくらいある状態で申し込んだのか」であったり、「いつから申請書を作成し始めたのか」であったりと、リアルなお話を聞くことができる有意義な会でしたね。
最初は右も左もわからなかったのですが、セミナーでは「学振とはどういう制度か?」という初歩的なところから丁寧に説明していただいて、疑問や不安を解消できました。申請書の書き方を、実際に学振に受かったOBOGの先輩から直接聞くこともでき、本当にありがたかったです。
提出は5月中旬くらいでも、先輩からは「2月頃から準備した方がいい」という話も出ましたね。 忙しい日々を送っていると「まだ3ヶ月くらいあるから大丈夫だろう」と思ってしまいがちですが、採用された先輩はそれくらい早くから始めているのだと知ることで、動き出すきっかけになると思います。
セミナーでは、申請書の書き方や考え方についても教えていただきました。 「誰が見ても分かりやすい書類にすること」というのは、当たり前のようでいて、そのとき改めて気付かされた視点でした。 学振の場合、審査するのは受入大学ではなく、大学研究者によって組織された審査委員会です。自分の研究分野とは異なる分野の方も多く、自身の専門分野では広く共有されている前提知識でも、審査員全員が持っているとは限らないんですよね。
どんな人に見られるのか、どんな情報が必要なのかは、特に羽飼さんのように初挑戦となると尚更重要ですよね。
セミナーに参加する前の時点では、理系分野の申請書を中心的に集めていたのですが、セミナーでは文系分野の申請書を見せていただく機会もありました。分野の違う人の申請書を参照できる機会は、大学でもなかなかないので、学ぶことも多くありました。
私の場合は、比較的業績が重視されるDC2での応募でした。 当時はファーストオーサーで゙パブリッシュした論文がなかったこともあり、「もしかしたらダメかもしれないな」と思っていたのですが、セミナーで話してくださった先輩が、確かファーストオーサーゼロでDC2に合格していた方だったんです。 応募前から少し諦めかけていたのですが、とても勇気づけられました。
確かに、実際に応募して採用された方々の話を聞くと、一気にリアリティが増すので、自分が取り組む物事として具体的に考えられるようになりますね。
私は過去2回不採用で、今回3回目の挑戦でした。 同じように、3度目の挑戦で見事採用された先輩の話もお聞きすることができて、内容的にも精神的にもとても助けられた会でした。セミナーでは質問もたくさん飛び交っていて、実際に直接採用者の先輩方とお話することができ、本当に有意義な機会でした。
セミナー後も、先輩方から実際の申請書を共有していただけて、申請書を作成するうえでとても参考になりました。
服部財団には、これ以外にも本当に語り尽くせないほどお世話になったので、もし私が後輩のために力になれることがあれば、喜んで協力したいと思います。
服部奨学生には、いろいろな分野の方々がいて、交流もかなり活発ですから、将来のビジョンを広げるきっかけの場でもありますよね。 分野によっては、博士課程の人があまりいないところもあります。ただ、身近に博士課程進学者がいない環境では、そもそも博士課程という進路じたい選びにくいと思います。
服部財団のOBOGには、アカデミアに進んでいる方々も大勢いらっしゃいますからね。 博士課程に進みたい気持ちがあっても、「周りはみんな就職するから」と尻込みして、進学を諦めてしまう人もいるかと思います。私たちの歩みが、そんな方々を勇気づけることに繋がっていけば嬉しいです。
今まで服部財団の先輩方に手助けしていただいたように、私もこれから後輩と関わりを深めていき、「将来のビジョンをより広く持ってもらえる」きっかけになりたいと思っています。 私の体験談を話すことで、彼ら・彼女らにとって参考になるような、そして勇気づけることができるようなキャリアを積むことができるよう、今後も研究に励みます。